StackOverflowの開発者アンケート(2018年版)

ソフトウェア開発者なら、ほぼ確実にお世話になっているサイトStack Overflowの2018年アンケート結果が公開されました。

insights.stackoverflow.com

個人的にはSOのアンケート結果をちゃんと見たのが初めてで興味深かったので、取り上げてみたいと思います。

ただし、あくまで「個人的に気になった部分」だけなので、言及すらしてない項目があります。ちゃんと知りたい方は、ぜひ元記事へ(英語だけど調査結果を読むだけなら困らないと思います)。

なお、見出しのカッコ内は元記事の項目名なので、元データを調べたい時にページ内検索用にご利用ください。

地域分布(Geography)

予想される通り、日本からの回答は(少なくとも人口比率やIT産業規模を考えれば)非常に少なく、わずか0.37%です(回答者が約10万人なので、日本からの回答者は400人未満でしょうか)。

回答が多いのは当然ながら米国(20%強)ですが、インド(14%弱)や英国(6.3%)といった(一応)英語圏は全般に高い水準を示しています。また非英語圏としてはドイツ(6.6%)が非常に高いですね(人口比で言えば英国より下ですが)。

ちなみに月間アクセス数だと日本は1.1%弱なので、やはり回答が非常に少ないのは確実です。ちなみに人口が格段に少ない韓国(1.2%)より少ないのですが、大丈夫なのかな。

自力で調べる手段(Ways Developers Learn on Their Own)

  • 公式文書や技術標準:83%
  • StackOverflow:83%
  • O'Reillyなどの技術書:50%
  • SO以外のネット上コミュニティ:50%
  • 当該技術のオンラインヘルプ:48%
  • 大学の教科書:20%
  • 知り合い:20%
  • 内部のWikiやチャット:17%
  • 友人や同僚による学習会(事前予約前提):4%

ブログとかは、「SO以外のネット上コミュニティ」に含まれるんですかね。大学の教科書が結構あるあたり、回答者層が伺えますね。

ジェンダー(Gender)

合計が100%を超えるので、複数回答が可能だったようです。

男性が圧倒的多数ですね。また、性的マイノリティの人々は通常の統計値(「5~8%」とか「11人に1人」などとされる)と比べて少ないですね。実際に少ないのか、それとも回答しづらいのかは分かりませんが。

人種と民族(Race and Ethnicity)

白人だらけ……。

第2位が南アジアというのは興味深いですね。

性的指向(Secual Orientation)

こちらは「ジェンダー」の結果よりも統計値に近そうな雰囲気ですね。

障害など(Disability Status)

  • うつ病など:8.5%
  • 不安障害あり:7.8%
  • 集中力や記憶に関する障害:5.9%
  • 自閉症(自称含む):2.1%
  • 視覚障害あり:1.4%
  • 聴覚障害あり:0.8%
  • 支援なしで立ったり歩行することが難しい:0.3%
  • 打鍵が難しい:0.3%

これは適切な判断の根拠があるのか分かりませんが、メンタルヘルス的に苦しいと感じている人が多いのは他国も、と見えます(判断が難しい項目でもありますが)。

年齢(Age)

最多は25~34歳(49.2%)。35歳未満が全体の4分の3を占めています。

使っている言語(Programming, Scripting, and Markup Languages)

上位陣(JavaScript、HTML、CSSSQLJava、shell、PythonC#PHPC++)は、Pythonが伸びた他は大きな変動はないようですね。

個人的にはシェルがずいぶん多いと感じるのですが、「開発用のマシンでlsやcpしたりnpm叩く」のも含むとかなのでしょうか……?

フレームワーク、ライブラリ、ツール類(Frameworks, Libraries, and Tools)

1位のNode.jsはいいとして、React(3位)よりAngular(2位)が上なんですね。

あと、4位が.NET Coreですが、これってWindows Server上のASP MVCやらWebFormsやらも含むのでしょうか……(いずれも12位まで出てきてないので)。合算なら、たしかに高いかも。

個人的にはCordovaが案外高い(7位、8.5%)と感じました。Xamarin(9位、7.4%)も大手で使う事例はあまり見ないけど、それなりには使われているのですね。

データベース(Databases)

上位はMySQLSQL ServerPostgreSQL、MongoDB、SQLiteの順。Oracleが案外低い(9位、11.1%)ように感じました。

プラットフォーム(Platforms)

トップはLinux(48.3%)。Windowsは2位(35.4%)です。

ちなみに、後に出てくる「開発者が使うメインOS(Develper's Primary Operating Systems)」では、Windows(49.9%)、macOS(26.7%)、Linux系(23.2%)となっています。「Platforms」は開発ターゲットと捉えた方がよさそうですね。

ところでRaspberry Pi(6位、15.9%)って、iOS(8位、15.5%)より上なんですが、プロトタイプ開発する人が多いのかな……。マイコン込みの無線LANモジュールESP8266(19位、2.2%)まであるのはびっくりです。

言語の好き・嫌い・やってみたい(Most Loved, Dreaded, and Wanted Languages)

「Loved」では、RustやKotlin、TypeScript、Go、Swiftといった新しい言語が上位を占める中、Pythonも3位に入っています。

「Dreaded(避けられている)」ではVB6、CobolCoffeeScriptが上位です。個人的にはCoffeeScriptがそこまで嫌われる理由がよく分かりませんでした。

ちなみに、同じStackOverflowの履歴書作成サービス「Developer Story」で「使いたくない言語」を集計したもの、少し違う結果が出ています。

stackoverflow.blog

上位はPerl, Delphi, VBA, PHP, objective-Cで、直後にcoffeescriptが来ています(その次はなんとRuby)。VB6やVB.Netがない理由は不明です。

「Wanted」は、PythonJavaScript、Goと並んでいます。分かったような分からないような結果です。

開発環境人気リスト(Most Popular Development Envitonments)

回答者の開発分野によって大きく異なる項目です(他の項目も、全体とプロという区分けがあるのですが、全体的に大差がないので全体のみ紹介しています)。

Web系だとVSCodeVisual Studio、Notepad++と並びます。Notepad++ってちょっと意外。

MobileだとAndroid StudioVSCodeXcodeと、公式中心の並びです。VSCodeはCordovaやReact Nativeでしょうか。

システム管理・運用だとVimVSCode、Notepad++って、これなんかすごく偏ってませんかね……。ちなみにVimの永遠のライバルEmacsは15位(5.6%)で、Vim(40.1%)の7分の1以下です。

全世界で、給料の多寡と言語の関係はどうなのか?(What Languages Are Associated with the Highest Salaries Worldwide?)

全世界だと、上位はF#、OcamlClojure、Groovy、Perlと並びます。一方、米国限定だとErlangScalaOcamlClojure、Goとなっています。

全体的に関数型が強いですね。おそらく金融業で使われる(と聞きましたが……)ために給料が高いのではないかと推測します。ついでに、日本でこれが成立するかは全く分かりません。

Perlやshも比較的高いのですが、これらの言語を使う環境は歴史の長い大企業が多い(可能性が高い)ためなのかも。ただ、エンタープライズでの利用が多そうなCobolJavaがさっぱりなのは、ちょっと意外です。

地域ごとの雇用状況(Employment Status by Geography)

米、印、英、独、加という5か国のデータが出ています。

この5か国で比べると、特徴的な項目がいくつかあります。

  • インドは求職者(今は雇用されていない)が多い(9.3%)
  • 英国は個人事業者が多い(11.6%)・カナダも比較的多い(9.6%)
  • ドイツはパートタイムが多い(13.0%)

ちなみに、ドイツは後に出てくる「地域ごとの求職状況(Job Search Status by Geography)」で「新しい機会には興味がない」の比率が31.3%で他の地域を上回ります。パートタイムであることの問題は少ないのかも。

満足度(How Do Develpers Feel About Their Career and Jobs?)

  • キャリアについて:72.8%が満足、8.3%が中立、18.9%が不満
  • 仕事について:70.0%が満足、7.2%が中立、22.9%が不満

満足度、高いですね。

仕事に対する評価のジェンダー差(Differences in Assessing Jobs by Gender)

男性は、給与や福利厚生、開発環境といったものを重視する一方、他(女性、性的少数者)はいずれも最上位に「職場の環境や会社のカルチャー」を挙げています。男性はこの結果を頭に入れておいた方がいいんじゃないかな、と思いました。

あと、日本人には「残業などの時間」を明示する項目が必要だろうとも思いました。海外は基準が違うことがよく分かります。

と、かなり長くなりましたが、いくつかの項目について紹介してみました。ちなみにこれでも半分以下の項目しか扱っていないと思います。