米FCCのネット中立性破棄案、その後
米FCC(連邦通信委員会)のトップがAjit Pai氏に代わって、ネット中立性を破棄する案が出たところまでは書きましたが、その後5月中に色々とありました。かなり遅くなってますが、概略をご紹介。
パブリックコメント募集するもサーバダウン
「FCCによる『ネット中立性コメントシステムがDDoS攻撃を受けた』という主張に対する検討」
今回の提案についてパブリックコメントの募集が行われましたが、受付中にFCCのサーバはDDoSによりダウン、それ以上のコメントができなくなりました(その後復帰。コメントは8月16日まで受付が続きます)。
実は、コメント受付開始に伴って、コメディアンのJohn Oliver氏がコメントを呼びかけ、コメントを送るFCCのページにリダイレクトするだけのドメインまでとっていたのですが、それ以外のアクセスも想定されます。
FCCはこの件について、「複数のDDoS攻撃を受けた」「FCCの外部から大規模な攻撃が、商用のクラウドホストから来た」とは言うものの、詳細が出てこないことから、「フェイクDDoSではないのか」という憶測も呼んでいました(もっとも、FCCでもシステム管理関係者は党派性はなく、現在の人々はオバマ政権から継続して勤めているので、あまり積極的に疑えるかは疑問とのこと)。
ちなみに、FCCのCIOがZDNetのインタビューを受けた、というのが次の記事。
「CIO日記:FCCへのボット軍団による攻撃の教訓」
ただし、詳細はありません。FCCが公的機関である以上、「プロトコルなどをクローズにする」「CAPTCHAなどを使う」といった方法は端から採用不可能だった、という苦労話です。
大量のスパムコメント。その身元は流出データに基づく偽装だった。
「反ネット中立のスパマー、実在の人物になりすましてFCCに怒涛のコメント」
「FCCにスパム攻撃をした反ネット中立ボットは、氏名を漏洩したデータベースから引き出していた」
FCCには、大量の同一文言のコメントも届いていました(5月10日の上記記事時点で58000件)。それらは今回の案に対する賛成意見ですが、送り主はそれぞれ異なる実在の人物でした。
問題は、それらの人物は、少なくとも送られたようなコメントはしていないこと。
2つ目の記事によれば(根拠のリンクがずれているような気がしますが)、これらの送り主情報は、巨大スパム業者RCM(River City Media)が漏洩していた14億もの個人情報に含まれるものとのこと。
本当なら、個人情報の流出による問題が出る実例の1つとなります。
ブラウズ履歴の保護をむしろ強化する「BROWSER」法案も登場
「新しい『ブラウザ』法案、ブラウズ履歴共有の制約を目指す」
今回のFCCのネット中立性破棄案を推進した議員の一部から、今度はブラウズ履歴の保護を強化する法案が登場しました。
BROWSER (Balancing the Rights of Web Surfers Equally and Responsibly)と名づけられたこの法案は、ブラウズ履歴を含む利用者の機微情報の共有に、オプトイン承認を求めるものです。
これだと現状(ネット中立性が生きている状態)と同じように見えますが、この法案はプロバイダだけでなくウェブ企業も対象である点が違います。要するにGoogleやFacebookにも規制をかけるという案です。提起者のMartha Blackburn議員によれば「ウェブ企業にも通信企業と同じルールを適用するために提案した」とのこと。
同時にこの法案は、州以下のレベルでの追加規制を禁じるという側面もあるとのこと。
ターゲットとなるGoogleやFacebookが見過ごすはずもなく…。
「GoogleとFacebookのロビイスト、新たなオンラインプライバシー保護案の阻止を目指す」
というわけで、さっそくBROWSER法案の阻止に動いているようです。
また、7月12日には、各種のサイト上で「day of action」が展開されます。現在は参加者を増やすための呼びかけ中。
「Amazon、Reddit、ACLU等、ネット中立性のための『アクションの日(day of action)』を設定」
「『ネット中立性のためのDay of Action(7月12日)へのご参加を」